
家を新築したり、購入するときには、なるべくお得に購入したいものです。家を購入するときに活用できる制度のひとつとして「住宅ローン控除」が挙げられます。住宅ローン控除は、住宅ローンを組んだときに適用される控除制度です。この記事では、住宅ローン控除の概要と2025年以降の住宅ローン控除について解説します。2025年以降では、2024年度とは異なる点もあります。これから家を新築する方や、家を購入する方は、ぜひ参考にしてみてください。
住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除とは、新築住宅や中古住宅をローンで購入したときに、10年から13年の期間限定で所得税や住民税から控除を受けられる制度です。住宅ローン控除は、住宅ローンを組んだ場合にのみ適用されます。現金で家を購入した場合には、住宅ローン控除は適用されないので注意しましょう。
住宅ローン控除では、新築住宅を住宅ローンで購入した場合で13年間、中古住宅を住宅ローンで購入した場合で10年間の控除を受けられます。控除額は、住宅の性能によって変わります。2024年以降は省エネ基準適合住宅以上の基準を満たしていなければ、住宅ローン控除を受けることができません。
2024年以降の住宅ローン控除は、省エネ基準適合住宅であれば最大4000万円、ZEHの基準を満たす省エネ住宅であれば4500万円、認定低炭素住宅と認定長期優良住宅であれば最大5000万円まで控除の制度を利用可能です。
2024年は、子育て世帯や若年夫婦世帯の場合のみ最大額での控除を受けられます。子育て世帯や若年夫婦世帯以外の場合、控除対象となる住宅ローンの額が減ってしまうので注意しましょう。
また、住宅ローン控除は住宅の購入金額ではなく、ローンを組んだ額が適用されます。例えば、5000万円の認定長期優良住宅を購入した場合でも、ローンを組んだ額が3000万円であれば、3000万円までが住宅ローン控除の対象です。
住宅ローン控除は、控除を受ける年の年末に残っているローン残高で決定します。2023年であれば、2023年12月時点のローン残高に0.7%をかけた額が控除額になります。控除額の割合は、ローン額や住宅の省エネ基準などによって変動することはなく、一律で0.7%です。
省エネ住宅
省エネ住宅とは、通常の住宅に比べて断熱性能が高い住宅のことを指します。断熱性能が高い住宅は、外気温の影響を受けにくく、室内の温度変化が緩やかなことが特徴です。一定以上の断熱性能や気密性をクリアした住宅は、省エネ住宅として認定を受けられます。
省エネ住宅は、断熱性能が高いのでエアコンなどの消費電力が最小限で済みます。とくに、夏や冬はエアコンなどの稼働時間が長くなってしまいます。省エネ住宅であれば、一度涼しくした部屋や暖かくした部屋が外気温に影響されにくいので、省エネを実現可能です。
ZEH住宅
ZEH住宅とは、年間のエネルギー収支をゼロ以下にできる住宅のことを指します。エネルギー収支をゼロにするためには、電気を作り出し、なるべく節電して使用することが求められます。ZEH住宅には、太陽光発電やオール電化設備が必要不可欠です。
ZEHの中にも、ZEHやZEH+、次世代ZEHなど、性能によって段階があることが特徴です。住宅ローン控除では、どの段階のZEH住宅であっても一定の控除額になります。ZEH住宅としての認定を受けるためには、ZEHの基準を満たした住宅を新築し、申請を行う必要があります。
認定低炭素住宅
認定低炭素住宅とは、地球温暖化の原因となるCO2の排出を抑えることができる住宅のことを指します。具体的には、断熱性能や気密性が高く、ヒートショック防止などの対策が行われている住宅です。
認定低炭素住宅は、省エネ住宅やZEHと同様に電気代の節約が見込める点がメリットです。また、住んでいる人の健康に配慮した住宅設計が魅力です。住宅ローン控除でも、最大で5000万円分の控除を受けることができます。
認定長期優良住宅
長期優良住宅とは、長い間良好な状態で住み続けられる住宅のことを指します。具体的には、耐震性や住宅の劣化対策、省エネルギー性などの基準を満たしている住宅のことです。長期優良住宅に認定されるためには、着工前に申請を行う必要があります。
長期優良住宅は、住宅ローン控除以外でもメリットがあります。例えば、固定資産税や所得税、不動産取得税などの税優遇を受けることが可能です。さらに、住宅ローンの金利も安くなるケースもあります。
2025年以降も住宅ローン控除を受けられる?
住宅ローン控除は、2025年まで継続して実施することが発表されています。ただし、2026年以降まで住宅ローン控除が延長されるかは、現時点で未確定です。住宅ローン控除の延長が決定されなければ、2026年以降は住宅ローン控除を受けることができません。
また、2025年以降の住宅ローン控除では、省エネ基準適合住宅以上の基準を満たした住宅のみ控除を受けられます。省エネ基準適合住宅以上の基準を満たしていない住宅は、2025年に住宅ローン控除を受けられないので注意しましょう。
さらに、2024年までは子育て世帯や若年夫婦世帯のみ、住宅ローン控除が適用される金額が高く設定されていました。しかし、2025年以降は、子育て世帯や若年夫婦世帯が優遇されるかが決定していません。
今後、2024年と同様に子育て世帯や若年夫婦世帯への優遇が決定される可能性も十分あります。2025年に住宅ローン控除を利用したい場合は、住宅ローン控除額の動向に注目しておきましょう。
2025年に住宅ローン控除を受けるためには?
2025年に住宅ローン控除を受けるためには、省エネ基準適合住宅、ZEH水準省エネ住宅、認定低炭素住宅、認定長期優良住宅のいずれかを新築する、または購入する必要があります。
省エネ基準適合住宅以上の基準を満たしていない住宅の場合、住宅ローン控除を受けることはできません。また、住宅ローン控除は、控除対象になる金額の上限が設定されています。控除されるローン額以上に住宅ローンを組んでも、対象となるのは上限までとなるので注意が必要です。
例えば、認定長期優良住宅の新築で6000万円の住宅ローンを組んだとしましょう。組んだローンは6000万円まででも、住宅ローンの控除対象となるのは5000万円までです。さらに、住宅の省エネ基準によって控除対象の額が変わるので、事前にチェックしておくと安心です。
住宅ローン控除の適用条件について
2024年(令和6年)の住宅ローン控除には、いくつかの重要な変更点があります。控除を受ける条件として必須となるのが、省エネ基準を満たす住宅であることです。対象外となる住宅もあるため、事前に適用要件を確認しておくことが大切です。
住宅ローン控除の適用条件
住宅ローン控除の適用条件は、住宅の種類や家のつくりなどによって異なりますが、共通して満たすべき条件がいくつかあります。以下の条件を確認してください。
1.居住用の住宅であること
2.床面積が50㎡以上であること(注1)
3.合計所得金額が2,000万円以下であること
(ただし、2024年末までに建築確認を受けた新築住宅で、床面積が40㎡以上50㎡未満の場合、合計所得金額が1,000万円以下でなければならない)
4.引き渡し、または工事完了から6カ月以内に居住すること
5.店舗等併用住宅の場合、床面積の半分以上が居住用であること
6.住宅ローンの償還期間が10年以上であること
上記の条件をすべてクリアした上で、住宅の種類によってさらに新たな適用条件と控除限度額が設定されています。詳細は以下をご覧ください。
新築住宅のケース
2024年1月以降に建てた新築住宅は、省エネ基準を満たさないと住宅ローン控除を申請できません。ちなみに、2024年1月以降の新築住宅とは建築確認が2024年1月1日以降にされた住宅のことです。
新築住宅の住宅ローン控除の借り入れ限度額は、以下の通りです。
・認定長期優良住宅や認定低炭素住宅は4,500万円(子育て世帯・若者夫婦世帯は5,000万円)
・ZEH水準省エネ住宅は3,500万円(子育て世帯・若者夫婦世帯は4,500万円)
・省エネ基準適合住宅の場合は3,000万円(子育て世帯・若者夫婦世帯は4,000万円)
ちなみに、控除期間は13年間、控除率は0.7%となっています。2023年と比較すると、子育て世帯・若者夫婦世帯を除いて、借り入れ限度額が引き下げられている点に注意が必要です。控除を受けるには住宅性能の証明書類が必要となるため、設計段階から適用基準を意識し、事前に準備を進めておくことが重要です。
買取再販住宅のケース
買取再販住宅とは、宅地建物取引業者が中古住宅を購入し、リフォームして再販売する住宅のこです。買取再販住宅を購入すると、住宅ローン控除の対象になります。ただし、住宅ローン控除を受けるには、以下の条件をクリアしなければなりません。
1.宅地建物取引業者から住宅を購入していること
2.宅地建物取引業者が住宅を取得してから2年以内に購入していること
3.住宅取得時、その住宅の新築日から起算して10年経過していること
4.リフォーム工事の総額が、住宅の取得金額の20%以上であること
(ただし、リフォーム工事の総額が300万円を超える場合は、300万円)
5.以下のいずれかのリフォーム工事をしたこと
(1)以下の「工事の内容」第1号から第6号に該当するリフォーム工事を行い、工事の合計額が100万円を超えること
(2)50万円を超える、「工事の内容」第4号から第6号のいずれかに該当する工事を行うこと
(3)50万円を超える、「工事の内容」第7号に該当する工事を行うこと
※「工事の内容」
ここで言う工事の内容を、以下に列挙します。
第1号 増築・改築などの建築基準法上の大規模の修繕
第2号 マンションの場合で、床または階段・間仕切壁・主要構造部である壁のいずれかの過半の修繕・模様替え
第3号 居室・調理室・浴室・便所・洗面所・納戸・玄関・廊下のいずれかの、床または壁の全部の修繕・模様替え
第4号 耐震基準に適合させるための工事
第5号 一定のバリアフリー改修工事
第6号 一定の省エネ改修工事
第7号 給水管・排水管などの修繕
中古住宅のケース
中古住宅を取得する際は、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
1.1982年(昭和57年)1月1日以降に建築された住宅
2.取得日前の2年以内に耐震基準に適合していることが証明された住宅
3.上記に該当しない要耐震改修住宅で、取得日までに耐震改修を行う申請をしたうえで、居住する日までに耐震基準に適合することが証明されたもの
リフォームを行った場合
10年以上の償還期間を持つ住宅ローンを利用してリフォーム工事を行った場合は、住宅ローン控除を受けられます。ただし、リフォームの内容や費用、工事完了日によっては控除の対象とならないケースもあるため、事前に制度の要件を確認することが重要です。
住宅ローン控除適用により還付される金額はいくら?
住宅ローン控除によって還付される金額は、いくらになるのか気になるところです。ここでは、住宅ローン控除の適用による還付額を、以下の前提条件をもとにシミュレーションしてみましょう。
・子育て世帯や若者夫婦世帯に該当しないその他世代である
・2024年に新築された省エネ基準適合住宅に居住している
・所得から各所得控除額を差し引いた課税所得金額が500万円
・年末時点で、住宅ローン残額が4,000万円
最初に所得税を割り出してみましょう。課税所得金額が330万円から694万9,000円の範囲なので、所得税の税率は20%となり、控除額は42万7,500円となります。
計算式はこのようになります。
所得税:500万円 × 20% - 42万7,500円 = 57万2,500円
次に住宅ローン控除を計算しましょう。年末時点での住宅ローン残額は4,000万円となっていますが、新築の省エネ基準適合住宅に対する借り入れ限度額は、3,000万円までしか認められません。
控除率は0.7%なので、計算式はこのようになります。
住宅ローン控除額:3,000万円 × 0.7% = 21万円
この21万円が、先ほど計算した所得税57万2,500円から控除される金額です。つまり、確定申告すると所得税が21万円分還付されることになります。
今度は先ほどの前提条件から、課税所得金額を300万円に変更して計算してみましょう。課税所得金額が195万円から329万9,000円の範囲なので、所得税の税率は10%となり、控除額は9万7,500円となります。
計算式はこのようになります。
所得税:300万円 × 10% - 9万7,500円 = 20万2,500円
所得税が20万2,500円となるので、先ほどの住宅ローン控除額21万円をすべて所得税から控除できません。このような場合、控除しきれなかった金額は翌年の住民税から控除されます。
ただし、住民税の控除には限度額が設定されていて、所得税の課税総所得金額の5%まで(または97,500円まで)となっています。
今度は、先ほどの前提条件を子育て世帯・若者夫婦世帯にあてはめてみましょう。このケースでは、新築の省エネ基準適合住宅に対する借り入れ限度額は、4,000万円まで拡大されます。
住宅ローン控除額の計算式はこのようになります。
住宅ローン控除額:4,000万円 × 0.7% = 28万円
ちなみに、翌年のローン残額が3,900万円に減ったと仮定すると、翌年の住宅ローン控除額は以下のようになります。
3,900万円 × 0.7% = 27万3,000円
このように、返済が進むにつれて控除額は減っていきます。しかもこの控除は、13年間にわたって適用できます。
住宅ローン控除の必要書類
住宅ローン控除を受けるためには、建設住宅性能評価書と住宅省エネルギー性能証明書を取り寄せなければいけません。証明書は登録住宅性能評価機関などに発行を依頼することが可能です。
住宅ローン控除を受けるためには、会社員であれば初年度のみ自分で確定申告する必要があります。建設住宅性能評価書と住宅省エネルギー性能証明書をハウスメーカーに発行してもらい、書類を準備してから確定申告を行いましょう。
建設住宅性能評価書と住宅省エネルギー性能証明書は、住宅の工事の着工前に発行できないので、住宅を建築する前に証明書の発行が可能かを確認しましょう。また、証明書の発行は、ハウスメーカーや工務店に依頼するのがおすすめです。
まとめ
2025年であっても、住宅ローン控除を受けることは可能です。2025年であれば、最大5000万円まで住宅ローン控除の対象になります。ただし、2026年以降は住宅ローン控除の制度が継続されるかは決まっていません。住宅ローン控除を利用したい場合には、なるべく早めに住宅の建築や購入を行いましょう。
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引用元:https://www.kuros.co.jp/